苺とうどん

先に書いたように、伯父は苺農家であった。
他の物も作っていたけど、出荷していたのは苺だけだと思う。あとは自分達で食べたり、くれたり、親戚や知人に売ったり。

苺の時期は冬から春。正月に集まると、必ず酔った別の伯父が子ども達を引き連れ、勝手にハウスにw
みんな勝手に食べまくる。
当然、遊びに行った時も散々食べる。



とりたては最高に美味しい。よく、苺狩りではミルクを持たせているようだが、あんなものは必要ない。十分甘いから。どうやら、土がいいらしく、近所でも一番甘いそうだ。
ある日突然、ダナーから女峰に変わっていたが、個人的にはダナーの方が大きくて甘くて好きだった。

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わたしが子どもの頃、伯父はいつもうどんを打ってくれた。
木で出来た浅いボールのようなものに、うどん粉と塩を入れ、少しずつ水を入れて練っていく。
それから、うどん用と思われるが、まな板お化けに丸くなった生地を乗せ、ビニール(肥料とかハウスのw)を敷く。それを足で踏む。感触が楽しくて、わたしもやらせてもらった。踵に体重を乗せるのがコツ。
次は麺棒で伸ばす。伯父、素晴らしい手付き。
適当に伸びたら、パタパタ畳んで切る。その包丁もおそらくうどん用だったと思う。形が長方形。切る時に「サクサク」といい音がしていた。
当然、最後に茹でるのだが、当時は茅葺き屋根の古い民家。土間の台所のほぼ中央に、かまどがあった(母が住んでいた頃は2つあったらしい)。そこで茹でるのだ。なので、勿論、火力など調整出来るわけがないので、びっくり水を刺す。わたしは結婚するまで、うどんはびっくり水を刺すものだと信じていた。



伯父のうどんは最高だった。踏みまくった甲斐もあってか、コシもある。汁は鰹出汁に醤油とシンプル。おかず(こちらでは糧と呼ぶ)は天ぷらや茹でたほうれん草。いくらでもいける。
余談だが、昔母に
「ご飯何?」
きいたら、
「ご飯はご飯よ!」
とキレられた。
母曰く、ご飯の時とうどんの時があるから、ご飯だと答えたらしいw
うどんも主食な母実家。
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昨日夕方おかあさんといっしょで、苺の歌をやっていた(朝は何故か見ていなかった)。


ビニールハウスで、苺はショートケーキになるのを夢見ている。ある朝、摘まれて、箱詰めされて、おじさんにトラックに積まれて運ばれる。
「おじさん今までありがとう」
しかし、苺はお鍋に入れられ、シュガーボーイと出逢い、ジャムになった。
「うふふ」←息子お気に入り


何度か見ているが、最初のハウスの絵からもう、涙が勝手に溢れてきた。おじさんは小太りで、伯父は痩せていた(小学生の頃、弟はクロマティと呼んでいたw)のは違ったが、何だか、いろんな思い出が駆け巡ってきた。そして苺は、
「おじさん今までありがとう」
まるで、伯父に言ったように聞こえた。



実はその日、その前にうどんを食べていた。美味しかったけど、伯父のうどんには勝てないがね。